日本公演でリアムの蛸庭を聞けたこと
先の日本公演で、リアムボーカルの『Whatever』と『Octopus's Garden』(以下蛸庭)を聞けたことは貴重なことなのかもしれない。
と、Xで見かけたポストを見て考えた。
日本人にとってはCMでお馴染み?のWhateverは、意外にもベストアルバムを除いてアルバムに収録されていないシングルのみの曲だ。
しかしその知名度は非常に高いし、日本では大手のCM曲に何度も使用されてることでも特に知られた一曲だろう。
00年代にはVAIOやアサヒでも使われていたそうだが、自分のCM曲としてのWhateverの印象はとにかく車。
オアシスなど全く知らない小学生の頃に、おそらくトヨタのマークXのCMを見て曲を覚えていたのだと思う。
この曲、オアシスの曲の中でもちょっと異質な曲だと思っている。
ピンク、ライトグリーン、ブルーといったパステルカラーに彩られたシングルジャケットワーク、空に抜けるようなストリングスの旋律、リアムの伸びやかなボーカル。マンチェスター育ちのオアシスの曲にしては、あまりに牧歌的な印象を抱かせる曲だ。
オアシスの持つイメージとして、特に初期の頃であればあるほど、粗野で無骨な北部の煉瓦とアスファルトに囲まれた工業都市の労働者階級のバンド、というものがどうしても強く感じられる。
しかし、この曲の持つCalmとPastoralさは、都会的な退屈さを振り払い、俗世から離れた田園的な響きを持っている。
まるで、ウェールズの丘陵地帯の朝霧の中で湿った空気を受ける中、ギターを取って生まれた曲のように。
そんなWhatever、ライブではアウトロにかけてビートルズのOctopus's Gardenが演奏されることがある。
蛸庭のキーは多分Whatever側に合わせており、そのおかげかリンゴの原曲よりも明るいトーンで歌われる印象だ。
アウトロにかけては他にもボウイの『All the Young Dudes』が候補になることもある。94年MTVのアコースティックverでは二人でAll the Young Dudesをハモっている。(https://youtu.be/MuePby6_5Ag?si=6XJTdB8_4vaVeGqE)
その他、Whatever→蛸庭→All the Young Dudesと続くフルセット豪華Verもあった。
(https://youtu.be/MuePby6_5Ag?si=6XJTdB8_4vaVeGqE)
オアシスの蛸庭といえば、96年のネブワースが最も印象的だ。
(https://youtu.be/g3qAsP-fiF4?si=GBZKpVvDs7esH9gj)
このライブでリアムがWhatever→ノエルが蛸庭でボーカルを分けていたり、同じ年のメインロードでリアムが途中放棄した後にノエルが蛸庭含めて歌うライブが有名だったりするせいで、個人的に蛸庭=ノエルのイメージが強かった。
しかし!
今回の再結成ライブでの『Whatever』は、続く蛸庭までキッチリとリアムがボーカルを取っている。
そんなの何年振り…?!と驚いたものの、去年2024年のライブからリアムは『Whatever』を歌う際に蛸庭を混ぜていたことを知り(練習してたんや…)とちょっと感動。(https://youtu.be/eN0heV2HzNE?si=zEY1LJwvgZLNVlFf)
ソロ活動再開直後のWhateverと比較すると、声の伸びが本当に良くなっていて、ソロの8年間かけてのリアムの努力が伺える。
(https://youtu.be/vN0f-RUHz6k?si=qnIMo6At1VrQTn7i)
そんな中で聴いた日本公演当日、『Whatever』を東京ドームで聴いた時に、これまでで一番エモーショナルな気持ちになってしまった。
日本公演のちょうど一ヶ月くらい前、ポール・マッカートニーがLAでのオアシスのライブを見に行ったニュースを知っていたからだろうか?
それとも、怒りも悲しみもなく、自由を謳歌している兄弟がスクリーンで並び立っている姿を見たからだろうか?
分からないけれど、東京ドームで合唱しながら見たモニターには、眩しいほどのパステルカラーに彩られた二人の兄弟の姿がPeacefulに映っていた。
初期のノエルの曲からはaway症候群というか、あの鬱屈とした灰色のマンチェスターから出ていきたい逃避の想いをひしと感じ取ってしまいがちだ。そんな中、時折混ざるalrightからは、その現実の肯定の楽観性も見えてくる。
逃げ出したい現実の閉塞感と、それでも大丈夫と言い聞かせる自己暗示。異なる二つの感情が混ざり合う複雑さ、二重構造を歌った初期のオアシス曲は、そんな人間の普遍性を表している。
だからやっぱり、Slide AwayとWhateverが好きなんだよな…とこの記事を書きながら当日の動画を見返して思っている。
そういえば、当日のMC?でリアムが「What...」と言いかけていたけれど、あれってオーディエンスは「Ever!!」って叫ぶべきだったのかな。Slide Awayの余韻に浸ってる中、そんなコーレスみたいな高度なことできなかったよリアムちゃん…。
ドームでは二日とも1階席からステージ見ていたので、Whateverのイントロが始まった後、アリーナのオーディエンスのスマホが一気にパステルカラーに染まったのがよく見えた。
体感アリーナの6割を超えていたように思うのだが、(録画しなきゃ…!)とあれだけの数のオーディエンスに思わせるのはすごいことだ。Whateverが好きな人間として、あれだけ大勢がこの曲好きなんだなと密かに嬉しくなった瞬間だった。
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